第四話 撃…倒れた兵士の傷口から、絶え間なく血が溢れ出す。 致死量と一目でわかる。倒れた死体の周りには、大きな血だまりができているのだから。 そして、その兵士を貫いたスウォームの右腕からも、血が雫のように地に落ちていく。 血の、生臭い臭いが風にのって鼻を刺激する。 腕に付着した血を、舌でなめとったスウォームは、何かをふっきるように、背中の漆黒の翼を広げ、咆哮した。 「ギャオォォォォォォォォォォォォン!!!」 その咆哮の後、兵士達が悲鳴をあげて逃げ出す。 「に、逃げろぉぉぉぉぉ!!!!」 「殺されるぅぅぅ!!!」 その逃げる様子を見ながら、スウォームは叫んだ。 「…クックック…サァ!逃ゲ惑エ人間!我血肉トナルノダ!骨ノ一欠ケラモ残サz……」 だがその叫びは、スウォームの周りに巻き起こった爆音と爆風にかき消された。 それは…ファントムの放った『メテオシャワー』だ! 彼は腰の持ち物袋から『ドラゴンの心臓』をとりだすと、一気に口に押し込み、飲み込んだ。 そしてそのまま『メテオシャワー』を連発する! 爆音が止むことなく鳴り響き、炎が絶えることなく燃え上がる。 そして『ドラゴンの心臓』の効果が切れたとき、爆音は収まった。 「…やったか…?」 『メテオシャワー』が連続して直撃した場所は、赤くドロドロに溶けている。 あまりの高温に、地面が溶解したのだろう。溶岩のようになっている。 これなら、流石に生きてはいないだろう。 「…ふぅ…」 ファントムが息をつき、その場に座り込む。その場には、自分以外誰もいなかった。 終わったと思い、立ち上がろうとした時、溶岩の池の水面が揺らいだ。 「?」 そして、溶岩の飛沫を上げて、黒い翼を広げたスウォームが飛び上がった。 「な…!」 そのまま、近くの地面に着地するスウォーム。 足に触れた地面から蒸気と、肉を焼くようなジュウウという音が聞こえた。 今のスウォームの体は、かなりの高温であることはあきらかだった。 立ち上がって逃げようとしても、腕に力が入らない。恐怖心が、体の筋肉を硬直させている。 そして、ファントムの目の前までスウォームが歩み寄る。 「…効イタゾ、ナカナカヤルジャナイカ…ダガ、ココデオ別レダ」 スウォームが、鋭い爪を生やした右腕を振り下ろす! 「(…く、ここまでか…?)」 だが、聞こえてきたのは、自分の肉が裂けるような生々しい音ではなく、何か、硬い物にぶつかった音だった。 ジャンル別一覧
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